低迷企業年金 また逆風 積み立て不足 一括処理に 損失一気に表面化も
2010年2月20日 朝刊
日本航空の再建で問題視された企業年金の積み立て不足。企業は今後、年金の積み立て不足を一括して解消することを求められるようになる。国内外の会計基準が変更されるからだ。年金の積み立て不足が影響して、財務内容の悪化に苦しむ企業が増えそうだ。 (桐山純平)
企業年金の積み立て不足が拡大している。大和総研によると、主要上場企業(二百七十八社)の企業年金の積立不足額は二〇〇九年三月期で、計約二十一兆五千億円。前期から約七兆二千億円増えた。
積み立て不足は、株価低迷で年金資産の運用成績が予定通り達成できていない結果。将来の年金額は多くの企業であらかじめ決まっている(=確定給付型)が、そのための資産が足りない状況だ。
日本の現状の会計基準では、不足分の処理に十数年の時間をかけることを認めている。だが、会計基準の厳格化で今後は積み立て不足を一気に解消することが求められ、日本は二〇一二年に、欧州中心の国際会計基準は一三年にも同様の変更を予定している。決算書の透明性を高める狙いがある。
では、企業の業績にどう影響するのか。主要上場企業の積み立て不足のうち、八兆五千億円がまだ処理されていない額にあたる。ルールが変われば、その分だけの損失処理が必要なので、企業の内部留保が減り、財務を圧迫することになる。
業績の低迷、年金資産の運用難。さらに会計ルールの厳格化による財務内容の悪化で、企業の年金制度の維持に逆風が吹く。
野村証券の谷野琢治・年金企画課長は「将来の不安要素を今から減らしたいという企業の相談が増えた」と指摘。経営が破綻(はたん)した日航のように、退職者の年金が減額されるのはまれだが、年金制度の維持に関心が高まっているのは事実だ。
「会計のルール変更が結果的に、企業に年金制度の変更を促す」(ある公認会計士)。従業員自らが運用方針を決める年金制度の導入が、さらに増えるという予想もある。従業員が年金の運用リスクを背負う時代が来るかもしれない。
IFRSの導入が企業年金に与える影響について書いてみますと。
国際会計基準(IFRS)の改定基準を、日本では2012年に上場企業に強制適用する見通しで、最低3年間の移行期間を経て、2015年にも上場企業に強制適用される見通しになり、これが問題になっているようです。。
IFRSの包括利益では、企業が保有する株式や不動産などの時価の変動を考慮して、資産から負債を引いた純資産全体の価値がどの程度増減したのかが、利益とみなされます。
参考記事:ダイヤモンドオンラインのコラム
IFRSの新基準では、年金の積み立て不足を貸借対照表(IFRSでは財政状態計算書)に計上させる案が有力であり、さらには、積立不足額を純利益にも一括反映する案も検討されているようですので、これらが実現した場合、財務が悪化する企業が続出することになります。
つまり大企業でも、純利益への一括計上が必要になった場合は、影響が大きく企業が自前で年金を維持するのは極めて困難になるのではないかと思われます。
経営側から見ると企業の収益に過度な負担をかけずに、存続可能な制度へと企業年金を根本的に見直すべきではないかと言う意見が出てくるのは間違いありません。
本業が黒字でも、株価次第で赤字転落となるのを避けるため、企業年金の株式運用が後退したり、株式持合いが解消する流れになる可能性もあり、多くの企業で巨額の増資が必要になる可能性もあります。
日本の企業年金は投資先が国内株式や日本国債が主で、海外株式にはあまり投資されていません、日本の株式市場だけが低迷する中で、負の連鎖を起こして、株式市場の需給に影響が出る状況になる可能性は大きいです。
企業年金の負担に多くの企業が耐えられなくなり、日本企業の成長戦略(今でも外需たのみ)に大きな支障をきたす事態となれば、現在の企業年金関連の法制度の抜本的見直しが行われ、労働者の利益が損なわれる可能性もありです。
無条件に確定拠出年金に移行してよい制度となったり、予定利率を経営者の判断で引き下げることが可能な制度への法改正が考えられます。経済界は早くそうしてほしいと思っているでしょう、民主党政権になったので、自公民の時よりは抵抗するとは思いますが、企業が倒産しては本末転倒で経済界は雇用とかを盾に圧力をかけることは間違いないです。
私はリストラおやじの立場で、企業年金は放棄して積立金払い戻ししてもらいましたので、企業年金が今後も存続しようがダメになろうが知ったことではありませんが、企業年金を当てにして生活設計を立てている人は死活問題です。
企業年金は、日本の経済成長が続き、日本の金利がある程度まとも(3~5%が理想ですが今はゼロ金利)、会社が危機に陥ることはなく、年金基金が独立したファンドとして未来永劫持続するという前提の下で成り立ってきました。
今後は、そのような前提での運用はとても厳しいと思います。
個人的な意見ですが、企業年金に関しては以下のことを意識した方が無難かなと思います。
・企業年金が将来にわたって100%必ず存続するとは想定せず、企業年金ありきの借金や巨額消費は慎重にする。
・就職先や転職先を選ぶ判断基準に、企業年金があるか否かは入れない。