2010年2月4日木曜日

新型プリウスのブレーキ問題

「プリウス」ブレーキに苦情=日米で112件-国交省、トヨタに調査指示
 トヨタ自動車のハイブリッド車、新型「プリウス」のブレーキに関し、米国内でユーザーの苦情が98件に上っていることが3日、米運輸省の道路交通安全局(NHTSA)の資料で明らかになった。一方、国土交通省によると、日本国内でも昨年12月以降、計14件の同様の苦情が寄せられ、両国で人身事故の報告もあった。国交省はトヨタに調査を指示。アクセルペダルをめぐる大規模リコール(回収・無償修理)に続き、トヨタの新たな品質問題に発展する恐れが出てきた。
 プリウスは日本で生産され、新型は昨年5月に日米両国で発売。旧型を含む昨年の販売台数は、日本で約20万台、米国で約14万台。トヨタは80以上の国や地域で順次発売していく予定だ。
 NHTSAの資料によると、でこぼこ道を走行した際や、道路の隆起、くぼみ部分を通過した際、瞬間的にブレーキが利かなくなるという苦情が多い。これまで、この問題で追突などの事故が4件発生、2人が負傷。うち1件では、前方の車に衝突して運転者が首を負傷したという。
 国交省によると、国内での苦情は「滑りやすい路面などで低速時にブレーキが瞬間的に利かなくなる」という内容だという。昨年7月には、千葉県松戸市の国道で4台が絡む玉突き事故を起こしたプリウスの運転者が「ブレーキが利かなかった」と説明。この事故では追突された車の2人が軽傷を負った。(2010/02/03-13:17
トヨタ:国に報告「先月改善」 新型プリウス、ABSを修正
 トヨタ自動車が09年に発売した新型プリウスで、ブレーキが一時的に利きにくいとの苦情が日米当局などに多数寄せられている問題について、トヨタは3日、1月以降に生産した車では改善措置を施したことを明らかにした。
 3日、トヨタの佐々木真一副社長が、東京都内で直嶋正行経済産業相、前原誠司国土交通相と面会。直嶋経産相によると、「今年に入って製造した車は、ブレーキのシステムを調整して改善した」と報告したという。
 調整したのは、スリップしやすい路面で、ブレーキと解除を繰り返すABS(アンチロック・ブレーキ・システム)のコンピューター。旧型に比べ、ブレーキが解除されている時間が若干長く、運転者に違和感を与えていたことが分かり、解除時間を短くするよう修正したという。【柳原美砂子、米川直己】

 ニュースで話題になっています”新型プリウス”のブレーキが利かない問題。
 マスコミに流れているニュースから推察すると、トヨタとしてはABS(アンチロック・ブレーキ・システム) リリース時間を変更で対策しましたで、対外的には終わりにしたいようです。
 大企業の製品ですが、新製品を生産し始めて製品が安定するまで生産台数にもよりますがしばらく変更が行われます。
 ただ、ソフトの部分はちょっとした変更でも、バグチェック(特にブレーキのような安全の部分)には相当な時間が掛ります。日夜ラインでは変更が掛っているはずです・・・おもにコストダウンですがね。
 前にカーグラフィック(CG)という雑誌で性能チェックをVWゴルフの新型とインサイトを比較車としてテストした結果では、ブレーキ性能はプリウスがダントツに高かったです。
 乾燥路だけでなくウエットでの制動距離・回避性能は一番だったので、ブレーキが利かないケースは運転手の操作の仕方と路面コンディションなどが重なった結果なのでしょう。
 私の乗っている20系(前プリウス)でも、ブレーキのフィーリングは特殊です。
 停止するときに(最後1km以下)でカックンブレーキにならないようにするには細心の踏み加減が必要で、これがとても難しい。こだわらなければ普通に止まりますが、普通の車のように止めるにはハイブリッドシステムの制御が判っていて操作する必要があります。
時速13km以上で軽くブレーキを踏むと回生ブレーキ(電気に変換)が動作して、踏み加減を増やしていくと回生ブレーキも減速力を増やしていきます、ある一定以上踏み込むとこれに、油圧ブレーキが加わって減速します。
問題は12kmまで下がると、回生ブレーキが切れて油圧ブレーキだけになり、普通では判りませんがブレーキ力が少し減少します。ここからブレーキを踏み増して短時間に止めればそのまま止まります。(最後の瞬間はインジケーターにはモーターアシストの表示が出ていませんが、最後のカックンブレーキを考えるとモーターアシストが瞬間的に出ている)
この時点から少し時間をかけて減速させと、オートマ車が持っているクリープ現象(ブレーキを外すと少しずつ進む)を出すためモーターを駆動して進める動作に入ります。(エンジンは止まっている)
この時間が油圧ブレーキとモーター駆動の戦いとなり普通はブレーキを踏みこんでいるので停止することになります。
この辺に違和感が出ますがこれで、追突するのはおかしいと考えます。
ブレーキが利かないと言う部分で、プリウスには普通の車と違う点がもう一つあります。
クリープ現象を起こす制御は、特別な仕掛けがあり、坂道では斜度センサーが働き、モーターアシストを強化します。これは坂道発進の時、後ろに下がらないようにするためですが、一つ欠陥があります。
 この坂道発進用のシステムですが、登り坂だけでなく下り坂でも坂道と判断して、モーターアシストをするので、余分にブレーキの踏みこみ量が必要な点です。
天下のトヨタさんがこれを知っていて放置しているとは思えませんが、これを改善するにはソフトだけは完全にするには無理がありそうで、たぶんセンサがもう一個必要となりコストとリスクを天秤にかけた結果、このままとなっている気がします。新型プリウスの試乗でそこまで確認出来ませんでした。
こう言った、ハイブリッド車独特なブレーキを理解したうえで運転しないと、違和感が出ることは確実ですが、まあ普通では判らない程度までシステムは完成していると思われます。
今回、多くの苦情が出ていますが、これは売れすぎたためで、売り上げ台数の少なかったころはハイブリッド車は特殊と言うイメージがあったのですが、これだけ売れると特殊と言う点が薄れた点もあると思います。

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5 件のコメント:

  1. さすがです。元大企業の技術屋でプリウスのオーナーでないとこのような文章はかけません。すご~いです!!
    新型プリウスのブレーキ問題は、判断が難しいですね。
    改めて、ハイブリッドの難しさを再認識しました。
    ネットでこの問題の書き込みを見てみると、モータの特性と制御に関する知識がないままの記述があふれかえっています。
    私のような元FAの技術屋でもモータの回生につてほとんど理解できていのに一般の人にモータの回生は理解できません。
    回生の原理がわかっても、どうして回生を利用してブレーキがかかるのか理解は、もっと難解です。
    それに加えてプリウスのモータ駆動はインバータで制御しています。
    インバータで回生を制御する話になるともう完全についていけません。
    プリウスのブレーキは、モータの回生ブレーキと従来の油圧ブレーキも併用しています。ABS機能もありしかもFFです。

    私は、プリウスを従来の車と思っていません。新しい乗り物だとと思っています。
    したがって
    >こう言った、ハイブリッド車独特なブレーキを理解したうえで運転しないと、違和感が出ることは確実ですが、まあ普通では判らない程度までシステムは完成していると思われます。
    は、理解できます。
    また、
    >今回、多くの苦情が出ていますが、これは売れすぎたためで、売り上げ台数の少なかったころはハイブリッド車は特殊と言うイメージがあったのですが、これだけ売れると特殊と言う点が薄れた点もあると思います。
    は、当然と思います。

    今度、よければ カックンブレーキ 体験させてください。

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  3. おまけ
    誘導モータのブレーキは、インバータを使わない場合、駆動用の電源をOFFして、1つのコイルに直流を印加するとモータが停止します。
    この制御は仕事でやりましたので、どのように直流を制御すればスムーズに止まるかは体験済みです。
    ただし、装置を完全に止めるためには電磁クラッチを使い機械的に動かないようします。
    尚、直流は、完全な直流ではなく半波で全波もOKです。当然ですが停止までの制御方法は異なります。
    モータの駆動をインバータにするとモータの停止は全てインバータが行いますので、停止は条件の設定で対応します。
    インバータを使っても、完全に止めるためには、電磁クラッチが必要です。
    電磁クラッチを使う場合、モータがブレーキで止まる前に電磁クラッチをONします。
    どれくらいのタイミングでONにするかは現場調整になります。


    私が理解している回生
    回生とは、モータを駆動する電源をOFFするモータが発電機となります電圧が出ます。
    この電圧を回生電圧といい、モータの大きさや回転速度により異なります。
    回生電圧を利用すればバッテリーの充電が可能です。
    回生ブレーキは、実際にブレーキではありません。回生電圧が発生した状態で無負荷にするとモータがなかな止まりません。
    そこで、回生電圧に負荷(抵抗)を付けて電圧を消費させるとモータが止まりやすくなります。
    この止まりやすくなることをブレーキと表現しています。
    尚、これはモータと駆動電源の話でインバータ制御の場合は、全てインバータ内のソフトが制御します。
    インバータが回生をどのように制御するのかは、インバータのソフトで決まります。
    それと、モータですがモータの種類は誘導モータです。電気掃除機や電気丸ノコのモータとは種類が異なります。
    プリウスのモータが誘導モータかどうはわかりません。

    電気丸ノコには、ブレーキ付き製品があります。
    分解してみるとブレーキ専用のコイルがあり、そのコイルにダイドーを介して半波電圧を印加されるようになっています。
    誘導モータは、ブラシがありませんが、電気掃除機や電気丸ノコはブラシがあります。
    ブラシで制御しているモータは、駆動用のコイルに直流を印加しても停止しません。

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  4. ちょっと追加
    インバータを使わずモータを直流で停止させる場合は、負荷低抵抗=回生抵抗は、使いません。
    インバータの場合のみ負荷抵抗=回生抵抗は使います。回生抵抗の使い方は、インバータのマニュアルに従います。
    尚、インバータでもモータを停止させるためには直流をかけて停止させています。ただ、どうやって直流を印加しているのか、回生抵抗がどのように動作するかは分かりません。ただ、インバータのマニュアルには、モータの負荷によっては回生抵抗が必要で、ないと停止が設定どうりに動作しないと記述されているだけです。

    回生ブレーキ=回生電圧を利用したブレーキと解釈せず、モータのコイルに直流を印加してモータを止めると解釈すればすっきりとします。
    個人的は、直流ブレーキの方が理解しやすいです。
    尚、回転中の誘導モータのコイルに直流を印加するとどうしてモータにブレーキがかかるかは、興味があれば調べてください。

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  5. TXIさん、こんにちは
    沢山の書き込みありがとうございます。
    プリウスは普通の車のように運転できるところがすごい(笑)。
    プリウスのモーターは止まる時、発電機として動作させているようですが、その発電量をブレーキの踏み具合で変化させそれで充電すると言う、高度なことをやっています。
    電池はたしか230Vで、モーターは500Vで回っているのでインバーター制御のプログラムは理解を超えています。
    回生ブレーキの負荷は電池なのですが、充電量など電池の性能も相当なものなんでしょうね、リチュウムになかなか置き変えられないのは判る気もします。
    カックンブレーキですが、今度乗っていただいたときに、説明しますね、気にしなければ判らないくらいなのですが、最後の停止時にブレーキ力を抜いてそっと止めるのは難しいです。
    一応、同乗者には判らないようにブレーキ踏んでいます。

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