日本人が知らない巨大市場水ビジネスに挑む |
ネタばれですが一部をご紹介しようと思います。
目次
第1章 水は誰のものか?
なぜ,水が注目されているのか?
資源としての水,経済としての水
水は人間のライツか,ニーズか?
毎日300リットル使っていることをどう考えるか?
「水を使う権利」の売り買いが始まった
水を使うことの「両極端」を乗り越える
バーチャルウォーター
日本人がもっとも身近にできる水に対する貢献
バーチャルウォーターという考え方:日本は食糧自給率が低いからこそ国内の水を使わずに済んでいるらしい
水というと、飲み水のことばかり考えがちですが、実は食料を作るにも大量の水が使われている。
たとえば、牛を育てるには大量の芝や飼料が必要で、それには大量の水が消費されるので、その結果、ハンバーガー一個を作るのに、約1000リットルの水が必要なのだそうだ。
こういう水を換算して「バーチャルウォーター」と呼ぶそうです。
全ての食料を作るためにはこのように水が大量に必要となるわけで、食料自給率の低い日本は、結果としてアメリカやオーストラリア、中国から大量の水を輸入してるのと同じことになるそうです。
同じように、工業製品を作るにも大量の水が必要で、日本が輸出する自動車や家電製品よりも、日本が輸入している衣料品や鉄鋼の方がはるかに多くの水を使います。
よって、日本は作る過程で水を大量に使う食料や衣料品などを輸入しているおかげで、自国の水を使用せずに済んでいるそうです。
食料自給率問題は、こう言った見方をすると、将来どんな危機が起こるか考えることが出来ます。
第2章 問題が山積する日本の水
東京はこうして水源を確保してきた
4万5000キロの配管が老朽化している
水問題の悩ましさ
ノウハウが失われ,料金収入も頭打ちに
上下水道インフラの更新に必要となる120兆円
途上国の人々に受け入れられる技術支援とは?
なぜ,日本企業は水ビジネスで後れを取っているのか?
先端技術を追うことで満足してはいけない
水が国策として取り上げられる
水ビジネスの3つの掟
水争いを起こさないための知恵
時代の要請が水との衝突をもたらした
蛇口から飲める水が全国で出るのは日本とスイスだけ。なのに水道水の値段が安いのです。
蛇口から直接飲める水が出る国は世界で11カ国あり、そのうち、全国で飲める水が出るのは、スイスと日本だけだそうです。
それなのに、日本の水道代の平均利用料金は、先進国の多くの国よりはるかに安い。これは、そこ住んでる国民にとってはすばらしいことであるが、水道事業をビジネスを行うものとして考えるならとても良いこととも言い切れないようです。
日本は、今後高齢化で水の使用量が減ると言われている。人間ってのは、水の使用量が一番多いのは若い女性で、年をとると共に使用水量って下がっていくらしいです。
現在の水道ビジネスは、自治体が運用しているが、国全体の使用水量が減れば収入も減ることになり、水道とは巨大な固定費と老朽化設備の刷新を行うビジネスであり、コスト削減ってのは人の削減以外には簡単でないようです。
そうすると品質・スキルを維持しながらの効率化は必然であるが、今後は水道料金の値上げが避けられなくなるだろう。
第3章 なぜ,水がビジネスになるのか?
水にビジネスの概念はなかった
水ビジネスの本命はどの分野か?
日本に進出する水メジャー
「水は官がやるもの」というメンタリティ
水のコストアップは必要か?
60兆円市場から100兆円市場へ
水ビジネスから見た,中国の中規模都市の可能性
水ビジネス先行国は政治の後押しを受けている
水ビジネスに求められる統合技術の視点
水ビジネスの持続性,将来性
日本の上下水道のインフラ保有資産は約120兆円
1700の地方自治体に分かれて運営されている、日本全国の上下水道の保有資産を全部足すと、120兆円だという。(上水道が40兆円、下水道が80兆円)
金融機関であれば100兆円超の保有資産を持つことはあるが(郵貯は330兆円ほど)、インフラビジネスでこれほどの保有資産の規模は非常に珍しい。
日本中に電話網を張り巡らせているNTTの総資産は8兆円程度、ソフトバンクなど他の電話系企業と足し合わせても15兆円に届かない、JRだって全部足しても20兆円行かない規模。
第4章 水のマネジメントにこそチャンスがある
IBMが水ビジネスに乗り出す
流量を測れるセンサーは有望
海外の水に目を向け始めた組織
水という名のビジネスチャンス
日本の会社が見落としがちな人材と技術
ボリビア,フィリピンの水道事業民営化
「相手は裏切る」という前提のもとに作られる契約書
民間資本が世界中で問題を起こしているわけではない
スマートウォーター
ダムは資源の宝庫か?
世界の水ビジネス市場は2025年には100-125兆円。そのうち素材技術はたった1兆円市場しかない。
日本は水ビジネスでは、膜技術などの素材系に強い、とよく言われ、またその規模も1兆円程度まで成長などといわれているが、そもそも水ビジネス全体で見れば、その市場規模は全体の1%に過ぎない、と言うことはまだまだ参入の余地がある。
120兆円のうち9割は、それこそ世界の水メジャーのヴェオリアやスエズが得意とする運営・管理の市場なのです。
要素技術というのは、一般的には、うまくパッケージにして出したり、高いシェアで市場を独占すればビジネスとして成功する。
要素技術はそのまま裸で出しても、運営とマーケティングが巧い会社にアービトラージされてしまうことも多々ある。
具体的には、要素技術だけが優れても、それを活用して市場価値のあるものを作っていける会社は少ないから、その技術の本来の価値より安く買い叩かれてしまう。
で、買った会社は、その要素技術を他の運営管理力やマーケティング力と総合的に組み合わせて魅力的なパッケージとして、高く売りつけるってことです。
だから、日本企業が世界の水ビジネスで生き残るためには、こういうノウハウをつけていくことが重要になっていく、という話です。
第5章 水問題,水ビジネスを考えるセンスを磨く
ボトルウォーターは何が問題か?
食べるための水にも注目を
ウォーターフットプリントの落とし穴
水が金融の道具となってしまわないか?
水について知るための「水育」
水の売買に対する疑問
IPCCは,どう動こうとしているのか?
地域レベルでの気候変動予測と適応策
決めるのはIPCCではない
水ビジネスのヒント
水ビジネスへの新規参入,日本の強み
日本の水ビジネスを大きく育てる
「のびしろ」はどこにあるか?
水問題の解決に貢献できる人材
水ブームから前に進んでいくことを目指して
水ビジネスでも経営力より技術力にこだわり、「ガラパゴス」な日本
日本は「運営ノウハウが無い」などと言われているが、日本では料金回収や盗水に直面するなんてことが無いので、これは当たり前とも言えます。
しかし日本には、下水処理の浄化槽や膜技術などは世界一のものがたくさんあるそうです。
管理でも、先進国の都市の漏水率で20%を超えるのはざらだが、日本はたった3.1%という圧倒的な技術力。
それもあるのか、日本の水関係会社の社長さんは「他社にない優れた技術があれば一番になれる」「人より優れた製品を持てば、受け入れられる」という人が多いんだそうだ。
なんか水ビジネスまで、ガラパゴスなんですか、大丈夫か日本の将来と思ってしまう。
要素技術っていうのは、いくら優れたものを持っていても、一部企業にしか使わないから、買い叩かれやすい。
運営力や他の技術と組み合わせてパッケージする力やマーケティングのうまい会社にアービトラージされやすいので、技術だけで売れるなんて考えではダメ。
一方、グローバルな水メジャーは「我々には技術力なんて無いが、そんなものは後からついてくる」と言っている。
それで、実際に途上国などをはじめとする各国の水道運営・管理ビジネスに乗り出し、拡大している。
日本の水道事業の技術力が如何に上でも、結局外に出ていかないから、日本国内にとどまってガラパゴス化して終わりとなる。
途上国上下水道を受注しようにも、世界銀行の入札条件に見合わない日本の水道局
じゃあ東京都水道局とか、大きな水道事業者の一部は世界に出て行きゃいいじゃない、と言う人もいるだろうが、ここに大きな壁がある。
水ビジネスで海外進出と言っても、既に水道事業がある先進国から運営・管理を受注するか、途上国に新たに上下水道を作って運営・管理を行うの2通りしかない。
当然後者の方が入り込みやすい。
実際、日本は途上国に対して多額のODAを投じているにもかかわらず、ODAの水ビジネスには日本の水道事業は入り込めない。
なぜなら、ODAで行われる事業は世界銀行の入札基準を満たさないとならないわけですが、水ビジネスの場合「10万トン以上の浄水場で5年以上の運営・管理を5カ国以上で行った事がある会社」とのことで、日本の会社は一社も該当しないので、いつまでも入札に参加できないのだそうだ。
ごく最近、三菱商事などが中心となって、フィリピンの水道事業に進出したり、今年5月にもオーストラリアの水ビジネスの買収などが行われている。
東京都水道局などもそれに関わっている形で、自治体ベースでもいいので、こういう取り組みをしていかないと、世界の水ビジネスの気運に日本だけ取り残されるのは目に見えている。
カーボン(炭素排出権)に次いで、金融業界に注目される水
金融業界は、儲かりそうなところ、アービトラージしやすいおいしいところを見つけて、すぐに金融商品に仕立てて金にしようという人たちの集まりなわけだが、環境ビジネスの中の水もそのターゲットの一つである。
つい最近も、CO2削減の手段である排出権をさっさと金融商品に仕立てる仕組みを作ったばかり。
次に彼らは、今は水に注目しているのだそうだ。
具体的には、さっきの「バーチャルウォーター」の考え方に近い「ウォーターフットプリント」という考え方を導入。
一つの製品を作るのに消費する水を「ウォーターフットプリント」として、排出権と同じように、一国が消費してよい「ウォーターフットプリント」の量を制限してしまう。
そうすると、どうしても水を使う必要がある国は、「ウォーターフットプリント」を他国から買い入れないとならなくなるので、それを証券化して取引対象とすれば儲かる、と考えているわけである。
こういう流れは良い悪いは別として、どこかが始めると避けられなくなる動きである。
二酸化炭素排出権がそうだったように、おバカな官僚に任せておくと日本は水の代金を支払わないと、輸入も出来なくなる。
日本がより良いものを導入しようとしても、動きが遅ければ、単に損して終わるだけである。
こういう動きも考えると、日本全体の水ビジネスへの意識を挙げていくってのは重要なのがわかる。
日本は水資源には恵まれた国です。だから、水ビジネスの必要性なんて殆ど考えないわけだけど、世界のビジネス方向は違っている。
日本は危機感を持って、水の未来を考えていかなければいけません。
8月19日
07:45 2010年第2四半期 ニュージーランド 生産者物価指数(PPI)(生産高)(前期比)
13:30 6月 日本 全産業活動指数
15:00 7月 ドイツ 生産者物価指数(PPI)(前年比)
15:00 7月 ドイツ 生産者物価指数(PPI)(前月比)
15:15 7月 スイス 貿易収支
17:30 7月 英国 公共部門ネット負債
17:30 7月 英国 小売売上高(前年比)
17:30 7月 英国 小売売上高(前月比)
21:30 6月 カナダ 卸売売上高(前月比)
21:30 7月 カナダ 景気先行指数(前月比)
21:30 8/8 - 8/14 米国 新規失業保険申請件数
23:00 8月 米国 フィラデルフィア連銀景況指数