2010年9月23日木曜日

命の値段

内容はけっこう気になったので、全文引用です。
「命の値段」、非正規労働者は低い? 裁判官論文が波紋
 パートや派遣として働く若い非正規労働者が交通事故で亡くなったり、障害を負ったりした場合、将来得られたはずの収入「逸失利益」は正社員より少なくするべきではないか――。こう提案した裁判官の論文が波紋を広げている。損害賠償額の算定に使われる逸失利益は「命の値段」とも呼ばれ、将来に可能性を秘めた若者についてはできる限り格差を設けないことが望ましいとされてきた。背景には、不況から抜け出せない日本の雇用情勢もあるようだ。

 論文をまとめたのは、交通事故にからむ民事訴訟を主に担当する名古屋地裁の徳永幸蔵裁判官(58)。田端理恵子裁判官(30)=現・名古屋家裁=と共同執筆し、1月発行の法律専門誌「法曹時報」に掲載された。
 テーマは「逸失利益と過失相殺をめぐる諸問題」。若い非正規労働者が増える現状について「自分の都合の良い時間に働けるなどの理由で就業形態を選ぶ者が少なくない」「長期の職業キャリアを十分に展望することなく、安易に職業を選択している」とする国の労働経済白書を引用。こうした状況を踏まえ、正社員の若者と非正規労働者の若者の逸失利益には差を設けるべきだとの考えを示した。
 具体的には、非正規労働者として働き続けても収入増が期待できるとはいえず、雇用情勢が好転しない限り、正社員化が進むともいえないと指摘。(1)実収入が相当低い(2)正社員として働く意思がない(3)専門技術もない――などの場合、若い層でも逸失利益を低く見積もるべきだとした。
 そのうえで、逸失利益を計算する際に用いられる「全年齢平均賃金」から一定の割合を差し引いて金額を算出する方法を提案した。朝日新聞は徳永裁判官に取材を申し込んだが、名古屋地裁を通じて「お断りしたい」との回答があった。
この論文に対し、非正規労働者側は反発している。
 「派遣労働ネットワーク・関西」(大阪市)の代表を務める脇田滋・龍谷大教授(労働法)は12日に仙台市で開かれた「差別をなくし均等待遇実現を目指す仙台市民集会」(仙台弁護士会など主催)で論文を取り上げ、「企業の経費削減や人減らしで非正規労働者が増えた側面に目を向けていない」と指摘した。
 脇田教授は朝日新聞の取材に「論文は若者が自ら進んで非正規労働者という立場を選んでいるとの前提に立っているが、若者の多くは正社員として働きたいと思っている。逸失利益が安易に切り下げられるようなことになれば、非正規労働者は『死後』まで差別的な扱いを受けることになる」と話す。
 裁判官の間にも異なる意見がある。大阪地裁の田中敦裁判官(55)らは同じ法曹時報に掲載された論文で「逸失利益については、若者の将来の可能性を考慮すべきだ」と指摘。若い世代の逸失利益を算出する際、正社員と非正規労働者に大きな格差を設けるべきではないとの考え方を示した。

 なぜ、1本の裁判官の論文が波紋を広げているのか。
 逸失利益をめぐっては、東京、大阪、名古屋3地裁のベテラン裁判官が1999年、将来に可能性を秘めた若い世代に対しては手厚く配慮することをうたった「共同提言」を発表。おおむね30歳未満の人が交通事故で亡くなったり重い後遺症が残ったりした場合、事故前の実収入が同年代の平均より相当低くても、将来性を考慮したうえで全年齢平均賃金などに基づき原則算出する統一基準を示した。
2000年1月以降、この基準が全国の裁判所に浸透したが、長引く不況による非正規労働者の増加に伴い、事故の加害者側が「平均賃金まで稼げる見込みはない」として訴訟で争うケースが増えている。交通事故訴訟に携わる弁護士らによると、実際に非正規労働者の逸失利益が正社員より低く認定される司法判断も出てきているという。
 こうした中で発表された徳永裁判官らの論文。非正規労働者側は、交通事故訴訟に精通した裁判官の考えが他の裁判官にも影響を与え、こうした動きを後押しする可能性があると不安視する。(阪本輝昭)
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 〈逸失利益〉 交通事故などで亡くなったり、重度の障害を負ったりした人が将来的に得られたとして算定される収入。以前は男女別全年齢平均賃金などを基準とする「東京方式」と平均初任給を基準とする「大阪方式」で未就労者の逸失利益を算定する方法があり、地域格差があった。2000年1月以降は東京方式に沿った基準に統一され、不況で急増した若い非正規労働者にも適用されている。25歳の男性が交通事故で死亡した場合、67歳まで働けたとして、09年の男性の全年齢平均賃金(約530万円)をもとに生活費を半分差し引いて試算すると約4600万円になる。

 世の中の価値観が変化し現実の方に法制度を合わせろと要求する声は少なからずあるようです。
 経営側である経団連の派遣業界関係者の一部は、既存の法律を守ろうとする代わりに、自分たちに合わせて法律を変えろと公然と主張してきいます。
 今回の裁判官論文もまた、そうした世の中のニーズがあるので出てきたと言えます(支配者側のニーズですが)。
 価値観を”現実”の方に合わせようとするなら、考え方を統一させるべきです。
 非正規雇用は低賃金のまま固定されるという現実だけではなく、正規雇用との賃金差やサービスの差をそのままにした社会も考え直す時期に来ている、同じ仕事なら同一賃金にしないといけないとは思うのですが。
 論文では「自分の都合の良い時間に働けるなどの理由で就業形態を選ぶ者が少なくない」「長期の職業キャリアを十分に展望することなく、安易に職業を選択している」と、非正規雇用を肯定する内容で話が進められており、論文は支配階級(政府・経営者)の立場から見ていると思います。
 ほとんどの人が正規社員になりたくても、なれないので非正規になっている現実があり、建前に基づいて話を進めるのならば、逸失利益に関しても建前に基づいて考えるべきでしょう。
 個人的には、この論文は社会整備が出来ていないので、肯定するにはまだ早いと思います。
 しかし、引用文の最後の方では「非正規労働者の逸失利益が正社員より低く認定される司法判断も出てきている」ことが書いてあり、司法並びに法制度が現実を追認している。
 今回の論文は、雇用形態による収入格差に司法がお墨付きを与えるために書かれたのではないでしょうか。
 人の命の値段は、生涯賃金で算出される、無職の私は投資でいくら利益を出しても、普通に仕事のない時代、値段がつかないか・・・・
 話は変わって、人間は原始の時代から、食う為に仕事をする(狩りや栽培)、子孫を残す為に家庭を作る(棲みかと食糧が必要)、これは現在も同じですね。
 今の時代、本音で言えば、お金を稼ぐ能力が一番必要で、日本の学校はこう言ったことを教えない、日本の若者はもう少し貪欲になったほうが良い、日本に仕事がなければ、海外で仕事して稼ぐくらいの気概が欲しいです。

 ちょっと前に読んだ本にこんなことが書いてありました。
 「リスクを負う覚悟のない人間は、他の人がどんなに儲けていても、むやみにうらやましがったり妬んだりしてはなりません。貧乏人でいることに甘んじて、じっと辛抱してください。リスクを負う人間のおこぼれをもらって、それで我慢するのです。リスクを追わない人間にはリターンを追う資格はないのですから」
 面と向かって言うと、喧嘩になりますが、真理はこんなものでしょう。
923
07:45   2010年第2四半期  ニュージーランド  GDP(前期比)
07:45   2010年第2四半期  ニュージーランド  GDP(前年比)
14:00   8  シンガポール  消費者物価指数(CPI)(前年比)
16:30   9  ドイツ  製造業PMI(購買担当者指数)
16:30   9  ドイツ  非製造業PMI(購買担当者指数)
17:00   9  ユーロ  非製造業PMI(購買担当者指数)
17:00   9  ユーロ  製造業PMI(購買担当者指数)
21:30   9/12 - 9/18  米国  新規失業保険申請件数
23:00   8  米国  景気先行指数
23:00   8  米国  中古住宅販売件
FX投資
AUD/JPY買い80.704売り80.984
AUD/JPY買い81.104売り81.206
AUD/JPY買い81.098売り81.216
AUD/JPY買い81.094売り81.236
AUD/JPY買い81.174売り81.236

2 件のコメント:

  1. 難しいテーマですね。
    特に就職にからむ問題は、あまりにも変化する要素が多い上、就職後の経験の違いで年齢により考え方が大きく違います。

    高校生のころ友達に小さな八百屋の長男がいました。進学の相談ををしたところ、自分の考えの甘さを思い知らされた経験があります。彼は、小さい頃から店の手伝いをしており、売り上げもあまりなく将来がない事が中学の頃にはすでにわかっており、ある程度自分の進路を決め、それに沿って高校も決めて、その先も決めていました。
    この友達のおかげで大きく考え方が変わりその後の人生にも影響しています。

    子供は、親の後姿を見て・・・・・ ですかね。
    それと友達も

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  2. TXIさん、こんにちは
    生涯賃金は開業医とか高額所得者ではけっこうな賠償金額になります。非正規でも働いていれば金額換算できましが、ニート、フリーターの場合、計算できません。
    仮に、正社員で就職していたらで、計算するべきなのかもしれませんが、払う方も出来れば払いたくないので、ごねることになるんでしょう。
    この話は、これからの日本人の働き方から議論しないとダメでしょうね。

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