2011年8月1日月曜日

なぜ円高なのか

公益財団法人国際通貨研究所
主要通貨購買力平価[ドル円]

 公益財団法人国際通貨研究所によると、CPIベースの購買力平価によるドル円レートは132.50円、PPIベースの購買力平価によるドル円レートは100.72円、輸出物価ベースの購買力平価によるドル円レートは64.45円です(20115月)。
 為替相場はCPIベースを上限、輸出物価を下限として動くといわれていますが、両購買力平価の平均を取ると98.48円となりますから、現在の相場は円高に振れているという見方もできると思います。

 世界中の投資家は、日本がなぜ安全だと思って円を買っているのか?
 日本は政府の借金は多いが、日本経済の経常収支が黒字で短期的に見れば流動性リスクが低いと判断していると思います。
 現在、世界投資で買いになっているものは、金と日本円とスイスフランで、売りになっているものはドルやユーロです。

 日本と米国は同じように財政赤字問題を抱えているのですが、なぜ米ドルが売られるのか?ということになると、リーマンショック以降アメリカがウオール街の金融システムを維持するために大量にドル資金を供給しているからでしょう。
 お金も物と一緒で大量生産して流通量が増えると値段が下がる、ドルの価値は下がります。
 日本は日銀が金融緩和しているふりをしていますが、実際はお金の量を絞っているので、円高になっても不思議はありません。
 日本が本当に円の下落を望むのであれば、対策は通貨供給量を増やすことです。
 もっとも円高が居心地が良い人もいるわけで、国内消費者であるか国内生産者であるかによって違いますし、国内消費者でも給与所得者か年金生活者であるかによっても方向が全く逆になります。
 年金生活者にとって最大のリスクはインフレです。
 ついでに言えば、給料の下がらない、潰れない(この点は微妙ですけど)公務員も円高で物価が下落する社会が良いに決まっています。
 官僚から見ても、景気が良くなることで金利上昇が起これば日本政府のデフォルトが起きやすくなるので、増税して今のまま、不景気のデフレ社会を継続するのが良いのです。
 私は政府や日銀も「円安誘導には通貨の大量供給しかない」ことは分かっていると思います。
 官僚の意向と年金生活者等のために敢えて円高容認を行なっているのではないかと思っています。
 なので、政府は円高対策は行わないと言うことです。
 まあ、大臣が財務省の官僚を無視して暴走すれば別ですが・・・・
 週末の段階で、海外の投資家は「米債務上限引き上げが合意しない場合には、日本政府は円売り介入で円高阻止に動くだろう」と日増しに政府・日銀の円売り介入警戒感が強まっていました。
 しかし、野田佳彦財務相から介入について失言。
 29日午前の衆院財務金融委員会で野田財務相が、「(介入について)水準の話ではなく、過度な変動や無秩序な動きに対応することが基本」とまるで不介入宣言のような失言が飛び出し、一気に介入警戒感が後退し29日午前の東京外為市場で海外投機筋の77.50円のオプショントリガーへの売り仕掛けが奏功した。
 海外投資家は「隙あれば」77.50円のオプショントリガーの売り仕掛けに大挙すべく日本政府(通貨当局)の一挙手一投足を睨んでいた。
 ただ、29日は月末要因から仲値決済のドル不足が多く、前回318日の協調介入が「金曜日」だったこともあり、朝方から政府・日銀の円売り介入警戒感が強かった。海外投機筋も「ベイナー下院議長案の採決が否決されて円高が進むようなら円売り介入はある」と踏んで身構えていた矢先の野田財務相の失言だった。
 ここから77.48円まで円高になだれ込み、日本政府(官僚)は円高容認なので、介入なしに円高のまま放置となっています。
 それにしても、日本の政治家の無為無策には目を覆いたくなるのが現状で、そのトバッチリを受けて進む破天荒な円高は日本経済にとっては死活問題であり、まさに「円高亡国」で、日本の製造業と農業は壊滅するでしょう。
 菅政権は無政府状態に陥り、国民の生命と財産を守る気概も責任も感じられない。
 普通の国の金融大臣は、「介入についてはノーコメントが原則で発言で手の内が読まれてしまう財務相はもはや史上最低」と29日の財務相の国会答弁を海外のメディアは批判している。
 野田財務金融大臣の発言がきっかけで、77.50円のオプショントリガーへの売り仕掛けが奏功した以上、次は77.00円のオプショントリガーへの売り仕掛けもニューヨーク市場達成。
 次は、317日の戦後最高値76.25円トライ、今週は76円割れ、75円台への円高波乱の史上最高値の円高を見れるのではと思っています。
 米景気減速懸念があるので、5日発表の米7月雇用統計で雇用者数が前月に続いて伸び悩むことになればドル売り材料となるので、またこのタイミングはしっかり見ていかないといけません。
 円売り介入や追加緩和に踏み切る気がなさそうなので、米債務問題の決着後も75-80円レンジの円高定着する。
 この先は、日本産業の空洞化と貧困化がテーマだと思うこのごろです。

 今週のイベント
1日・月>
10:00 中国7月製造業PMI
(引き締め効果や米国減速などで低迷警戒。リスク回避を後押しする反面、利上げ抑制がプラス要因に)
16:55 独7月製造業PMI[確報]
17:00 ユーロ圏7月製造業PMI[確報]
17:30 英7月製造業PMI
7月のPMI指数は世界的に悪化)
23:00 米7ISM製造業景況指数/ISM支払価格
(相関性の高いシカゴPMI指数は予想を下回る。債務交渉難航も景況感の重石に)
日本で為替証拠金取引のレバレッジ(委託証拠金比率)規制の強化
(週明け以降、円高・株安が激化すれば日銀緊急会合の可能性)

2日・火>
10:30 豪6月住宅建設許可件数
(利上げの累積効果などにより、豪州の住宅市場は減速傾向)
13:30 豪中銀、政策金利発表
(米欧中の経済に先行き不透明感。利上げ慎重の声明が豪ドル安材料に)
17:30 英7月建設業PMI
(英国の7月指標は総じて低迷。緊縮財政や欧米債務懸念なども重石)
21:30 米6月個人所得/個人支出
(自動車生産・販売の復旧やガソリン下落などにより、消費関連は打たれ強さ)
21:30 米6PCEデフレーター
(資源高やドル安の累積効果などで下げ止まり。米債金利とドルを下支え)
米国 債務上限引き上げ問題、議会と政府の合意期限

3日・水>
10:30 豪6月貿易収支、小売売上高
(米中減速や資源相場の下落などが悪材料に)
21:15 米7ADP雇用統計
(週間の新規失業保険申請件数は小幅な改善。生産復旧などがプラス要因)
23:00 米7ISM非製造業総合指数
(資源下落はプラス面も、債務上限交渉の難航が景況感のマイナスに)

4日・木>
07:45 NZ4-6月期雇用統計
(最新の企業景況感指標は改善。前期の震災被害の反動も焦点)
14:00 日銀政策委員会・金融政策決定会合[5日まで]
20:00 英中銀、政策金利発表
20:45 欧州中銀、政策金利発表
(予想は現状維持。米国の債務問題が泥沼化すれば緊急緩和などの株価・ドル支援策も)
21:30 米新規失業保険申請件数
(前週は改善。日本からの部品供給再開や資源下落などが下支え要因)
21:30 トリシェECB総裁、定例記者会見
(欧米債務危機やインフレへの発言焦点。インフレ警戒を堅持なら利上げ余地でユーロ高)

5日・金>
09:00 日銀政策委員会・金融政策決定会合[終了後、結果公表]
(円高・株安の行方次第で追加緩和の可能性。市場の混乱次第では1日以降に緊急緩和も)
17:30 英7月生産者物価指数
(資源下落が物価上昇を抑制。利上げ後退でポンド安要因に)
20:00 加7月雇用統計
(前月までは底堅さ。資源高の一服や米欧中の経済動揺が微妙な重石)
21:30 米7月雇用統計
(伸び悩みへの警戒強い。ただし期待値が低い分だけ、前月の反動や生産復旧、資源反落などによる微妙な上振れを好感も)

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